2012年10月24日

山丹正宗(やまたんまさむね)|株式会社八木酒造部

新進気鋭 酒蔵訪問の旅 281蔵目

山丹正宗(やまたんまさむね)|株式会社八木酒造部

愛媛県今治市旭町3-3-8
蔵元のサイト:http://www.yamatanmasamune.jp


酒名:山丹正宗(やまたんまさむね)、丹波屋治兵衛 ■創業:1831年(天保2年)8代 ■杜氏:越智杜氏 ■仕込み水:中軟水 ■訪問日:2012/10/24

代表銘柄
山丹正宗 しずく媛 純米吟醸
山丹正宗 特別純米酒
山丹正宗別撰醸 丹波屋治兵衛 純米吟

造船とタオルの製造で有名な愛媛県今治市。
タオルは染める際に水が必要になるそうで、良い水が豊富にあることからこの地でタオルの生産が盛んになり、国内シェアの5割が今治で作られているとの事。

今治は人口16万という四国の中で5番目に大きな街で水にも恵まれ、かつては多くの酒蔵があったそうですが現在、酒を造っているのはわずか1社。その最後の一社が山丹正宗(やまたんまさむね)という酒を造る株式会社八木酒造部です。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|外観
株式会社八木酒造部は江戸時代の後期、天保2年(1831年)に八木 治兵衛氏が創業した現在で8代続く酒蔵です。

1830年、奈良県の大和八木から今治に移り住んできた八木治兵衛氏は、丹波屋という屋号で木綿と醤油の製造業を開始し翌年に酒造業に参入。「丹波屋」という屋号は、愛媛で商売をはじめる際に買い取った店の屋号との事。

治兵衛氏が酒蔵をはじめた天保2年とは、大飢饉が発生する2年前。
天保の大飢饉は天保4年に始まり、天保6年から8年にかけてが最もひどく、天保10年まで続いたそうです。
米相場は高騰し、幕府は度々減醸令を出すなど、酒造りに対する規制が厳しくなり酒蔵は大打撃。
多くの酒蔵が姿を消した時期ですが、そんな大変な時に創業されます。

これは私の推測ですが、木綿業や醤油業があった事でリスク分散されこの厳しい時期を乗り越える事ができたのではないでしょうか?

創業から約100年後の昭和10年には、市内で最も良い水が出るとされる現在の場所(旭町)に蔵を移転。
1950年に法人化した際に、醤油事業が丹波屋という屋号を使い、酒造業は八木酒造部という名称になりそれぞれ独立。現在に至っています。
醤油製造の丹波屋は2006年までは存在していたそうですが、今は無くなっているとの事。

写真は釜場。筆者が訪問した10月24日には今季の造りが行われていました。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|釜場
山丹正宗では毎年10月頭から仕込みを開始。11月の中頃に蔵の駐車場に屋台を出し新酒祭りというイベントを行うそうで、そのお祭りに間に合わせるようこの時期から酒造りを開始。甑倒しは3月の末という約半年に及ぶ長い仕込み期間です。
製造石数は約800石、愛媛県では2番手クラスに位置します。

代々、越智杜氏がこの蔵で酒造りを行って来ましたが、後継者不足によって越智杜氏組合は解散。 組合は解散したものの、現役で酒造りを続けている杜氏が4人いるらしく、その3名が山丹正宗で酒造りをされているとの事。

写真は酒母室。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|酒母室
酒造りに用いる米は極力地元米を使用する方針。
松山三井とその改良品種のひずく媛、フクヒカリの3種類をメインで使用。
あと鑑評会用にタンク1本だけ山田錦を使うとの事。

フクヒカリという米は、愛媛の中でも特に山奥にある久万高原町という村で、ごく少量のみこだわった製法で栽培されている品種。食米ですがそれが純米を造った時に面白い味になったので定番で使用されているとの事。
全国でも山丹正宗ともう1社、計2社しか使用していない珍しい米。

写真は仕込み部屋。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|仕込み部屋
愛媛は温暖で穏やかな気候の土地柄で、人柄も比較的ゆったりした穏やかなところがあります。
お酒もそれに通じるところがあり、穏やかで優しい食中酒。

日本海で取れる白身魚、タイ、ヒラメなど淡白なものが多く、魚に味を乗せるために醤油や砂糖で味付がされる訳ですが、その影響か愛媛では料理の味付けが全体的に甘いそうです。

少し甘い味付けの料理に合わせるためには、酒も少し甘口の方が合うため愛媛のお酒は日本酒度が0からマイナス1くらいの少し甘いの酒が多いとの事。

そんな愛媛の酒の中で山丹正宗が造る酒は、愛媛酒の定番である「食事にあう優しくて穏やかな酒」を踏襲しつつ辛口のキレの良い酒。

「正宗」という名前を商品名に背負っている以上、キレの良さが求められます。
切れはどうしても必要だという事で「優しくとも切れがある酒」をコンセプトに酒造りをされているそうです。

写真は槽場です。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|槽場

写真は創業者の名前を冠した商品「山丹正宗 丹波屋治兵衛
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|丹波屋治兵衛
丹波屋治兵衛という商品は、2011年にデビューした県外向けの特別品。
従来の山丹正宗とは全く異なる味を持つ酒で、コンセプトは「ワイングラスで飲む日本酒」。

何故、ワイングラスなのか? その理由は日本酒は本来香りが良い物ですが、盃やおちょこだとその香りがよくわからない事。
それともうひとつは最近は若い人の家にはワイングラスは置かれるようになりましたが、それに対しおちょこや盃など日本酒を飲むための酒器が置いてある家庭が少なくなった事。

8代目蔵元の八木 伸樹さんは家庭で日本酒を飲まれる際は必ずワイングラスを使われているそうで、だったらワイングラスで日本酒を飲む事を提案してみてはどうだろうか、と考えた事がきかっけだそうです。

食生活についても今の若い人の中で、昔ながらの和食だけを毎日食べ続けている、という人はほぼいなくなったといえます。パスタや中華、あらゆるジャンルの料理が食されている現在、それらの料理に合わせる日本酒を考えた結果、非常に華やかな香りと、酸味がきいてさっぱり飲める酒に仕上げたそうです。

洋食に合わせるには酸味が必要。
しかし酸味をきかすと、それが苦手という方も現れる。
そこには捨てるものも多くあったそうで、広く誰にでも飲んでもらう日本酒では無くなりましたが、現在の若い世代に訴えかける酒に仕上がったとの事。
2011年にデビューしたばかりの酒なので、今後どう進化していくのが楽しみです。

最後に訪問の証の記念撮影。
山丹正宗(やまたんまさむね) 株式会社八木酒造部|記念撮影
仕込みに使われていたという、大きなカメに驚く吾郎。

写真の大きなツボは蔵元の庭に長い間、置かれていたそうで下に呑口がついている事から、かつては水瓶なのか、酒を仕込んでいたのか何らかの酒造りに用いられていたそうです。

それに気がついた蔵元は、このツボで酒を仕込んだらどうだろう?と考え蔵に運んで税務署の職員さんを呼んで検定してもらい酒造りを開始。

醪を冷却する事が出来ず、室温を冷やしても中まで伝わらず、勝手に発酵しているのを見守った結果40日を超える長期醪。当初は田舎臭い酒をイメージしていたものの、とても綺麗で香りも華やかな酒に仕上がったそうです。

結局6造りを行った時点で、ツボにヒビが入って使用不可能。
修復する術もなく、現在蔵の片隅に置かれたままになっています。
面白いお話を聞かせていただき、ツボに感心する吾郎でした。




商品の購入・質問は山丹正宗(やまたんまさむね)|株式会社八木酒造部へお問い合せ下さい。
TEL:0898-22-6700山丹正宗、丹波屋治兵衛醸造元株式会社八木酒造部
ここで書かれているデーターは筆者が訪問した時点の情報となります。

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