2012年10月23日

石鎚(いちづち)|石鎚酒造株式会社

新進気鋭 酒蔵訪問の旅 277蔵目

石鎚(いちづち)|石鎚酒造株式会社

愛媛県西条市氷見丙402-3
蔵元のサイト:http://www.ishizuchi.co.jp/


酒名:石鎚(いちづち)、石鎚正宗 ■創業:1920年(大正9年)4代 ■杜氏:蔵元杜氏(蔵は杜氏ではなく製造責任者としている) ■仕込み水:中軟水 ■訪問日:2012/10/23

代表銘柄
石鎚 純米吟醸 緑ラベル 槽搾り
石鎚 純米吟醸 粕取り焼酎
石鎚 無濾過純米 槽搾り

西日本最高峰、四国の屋根と呼ばれる石鎚山。

日本七霊山のひとつで信仰山とされ、山の麓の国道を走らせると「石鎚」の名がつくお店や会社を多くみかけます。

その石鎚山の麓に位置し、登山口から車で数分の場所に位置する酒蔵が石鎚酒造株式会社です。

石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|石槌山

石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|外観
石鎚酒造株式会社は大正9年(1920年)に越智恒次郎氏が創業した現在で4代続く酒蔵です。

庄屋の14代目として生まれた越智 恒次郎氏は、かつては隣町の新居浜市で住んでいたそうですが、西条市に移り回船問屋を経て酒造業に転身。創業当時の酒名は「石鎚正宗」という、現在でも一部の商品で受け継がれています。

愛媛で兄弟蔵の先駆となった越智兄弟。左の方が弟の稔(みのる)さん、右が浩さん。
石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|越智兄弟
石鎚酒造では酒蔵見学は行われていません。今回、取引先という事で特別にご案内していただきました。

現在、石鎚酒造では4代目となる越智 浩さんと弟の稔さん兄弟が力を合わせて酒造りをされています。

余談ですが愛媛には「越智(おち)という苗字の方が多く、学校でも越智という人が一クラスに大勢いるそうです。プロ野球選手、巨人の越智大祐選手も愛媛出身とのこと。
越智についで真鍋という苗字も愛媛には多く、タレントの眞鍋かをりさんも愛媛県西条市の出身との事。

その愛媛には「伊方杜氏」と「越智杜氏」という2派の杜氏グループが存在するのですが、杜氏の高齢化と後継者不足の為、年々数を減らし越智杜氏組合に至っては解散してしまったそうで、酒蔵の間では「造り手の確保をどのように行うのか?」が課題となった時期があったそうです。

そんな問題が起き始めていた頃、蔵の後を継ぐことになった越智兄弟は「自分たちで酒造りをしよう」と考えます。
当時はキャリアもない蔵の後継者だけで酒つくりが出来るのか?せめて麹くらい麹屋さんに来てもらったら方がいいのでは?
周囲の反応は悪く「石鎚はだめになるだろう」といった噂までされる中、茨城県の酒蔵へ酒つくりの修行に行っていた弟の稔さんが戻ってこられ平成11年から兄弟で酒造りを開始されます。

その初年度の仕込みで造った大吟醸酒が、愛媛県の鑑評会で1位の成績で金賞を受賞。四国全体では優等賞を受賞。そして全国新酒鑑評会では入賞という快挙。

この出来事によって蔵の後継者だけでも酒つくりが出来る事が実証され、その後愛媛では後継者が続々と蔵に戻ってきて酒造りを行うようになります。自分でも酒造りが出来るなら、と休造していた蔵を復活させる後継者も現れるなど、愛媛県において後継者による酒つくりの先駆け的な存在となります。

そして現在では杜氏が来て酒を造る蔵の方が少数となり、愛媛県は次世代蔵元の活躍が目覚しい生産地として注目されています。

写真は麹室。 石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|麹室

愛媛県という生産地には現在46酒造場が存在します。隣の香川県は7社、徳島県が25社、酒処で知られる高知県でも18社ですから四国ではダントツに酒蔵の数が多いのが愛媛県です。

生産量では梅錦が約7千石を造っていて一位。
2位以下は不在で500石以下の酒蔵がたくさん存在。その小さな蔵の多くは世代蔵元が酒造りに携わろうかという面白い地域。

そんな愛媛県の酒蔵の中、年間で約800石の酒を造る石鎚酒造は、生産量でいうと梅錦に次ぐ2番手くらいに位置する存在になります。

写真は仕込み部屋。 石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|仕込み部屋
全ての仕込みタンクには温度を調節する機械が備えられています。

石鎚酒造では造られる酒の7割〜8割が県外に出荷されおり、外から人気が出て今それが地元にも戻ってきて広がりつつある注目の蔵元です。

酒造りに用いる米は、地元産では松山三井としずく媛(松山三井の突然変異株)。
県外産の米だと、兵庫の山田錦、岡山の雄町、あと五百万石。

「食中に活きる酒造り」という方針で酒造りをされていますが、蔵元の話によると「食中酒は狙って作れない」との事。4代目蔵元、兄の越智浩さんに話を聞くと

食中酒とはお客様から「あなたのお酒は食べながら飲むと美味しいね」という声が沢山集まって、初めて食中酒と言えると思うんです。
うちは圧倒的にその声が多い。平成13〜14年ごろからそういう声が多くなりました。
飲食店でとても良く売れ、おかわりが来る。

お寿司屋さん、お蕎麦屋さんなど素材の味を大切にしている店から石鎚は大切にされています。
そういう店の主人や、手だれな板前さん達が「越智さんのお酒はあせないんだよね」という話をよく戴きます。
となると「より良い食中酒を造っていこう」という気になる。
そういう事がきっかけで食中に活きる酒を目指すようになりました。

との事。

蔵は最初から食中酒を意識して酒を造ってきたのではなく、お客様の声を聞くうちに「ウチの酒は食中酒として強い」という事を知り、より喜んでもらう為に酒質の改良を続けた結果、「食事に活きる酒」が出来上がったそうです。

写真は槽場です。
石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|槽場

食べながら飲んで楽しい酒。
気がついたら酒が減っていて、酔い心地が良く、しかも純米酒が中心。
あと「石鎚は封を切って量が減ってきた頃から美味しくなる」とよく言われるそうで、蔵元は片口にお酒を注いて、少し空気に触れてから飲まれる事をお薦めしています。

写真は貯蔵庫。 石鎚(いちづち) 石鎚酒造株式会社|貯蔵庫
紫外線が出ない特殊な蛍光灯を使用している為、ご覧のとおり真っ赤。
酒はすべてビン貯蔵されるため、この大きさの冷蔵倉庫が合計4部屋あるそうです。

最後に、石鎚の酒はとても穏やかで例えが悪いのですが草食系の酒です。
香り立つ奇抜な酒ではなく、原酒のような力が押してくるパワフルな酒ではありません。
かといって灘のお酒のようなトラディショナルな酒とも違います。
食中酒ですが酒の真ん中のような味ではなく、果実の爽やかさを持った優しい食中酒です。

酒は草食系と例えましたが、造り手の越智兄弟は肉食系。
兄の越智 浩さんは、愛媛の若手の後継者をガンガン引っ張っていくリーダー的存在。そして弟の稔さんは花嫁募集中!

新進気鋭の次世代蔵元が次々に登場するであろう愛媛いおいて、外せない存在といえる石鎚。
日本酒ファンの皆様、酒蔵に嫁ぎたいと思っている独身女性の方は要チェックの酒蔵です。




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