2012年07月20日

一ノ蔵(いちのくら) すず音|株式会社一ノ蔵

新進気鋭 酒蔵訪問の旅 275蔵目

一ノ蔵(いちのくら) すず音|株式会社一ノ蔵

宮城県大崎市松山千石大欅14
蔵元のサイト:http://www.ichinokura.co.jp/


酒名:一ノ蔵(いちのくら)、すず音、ひめぜん ■創業:1973年(昭和48年) ■杜氏:社員杜氏(南部杜氏) ■仕込み水:中軟水 ■訪問日:2012/7/20

代表銘柄
一ノ蔵 無鑑査 本醸造辛口
一ノ蔵 発泡清酒 すず音(すずね)
一ノ蔵 特別純米酒 大和伝

東北本線松山町駅で下車したのは私一人。
駅前に立っても、商店らしい商店は無くタクシーの姿も無い。

果たしてこんな所に宮城県で一番大きな酒蔵「一ノ蔵」が本当にあるのだろうか?
その前にタクシーを拾わないと蔵に行く事も出来ない。

駅前の通りを少し歩くと、事無く無くタクシーを発見。
運転手に「一の蔵まで」と告げると、タクシーは慣れたハンドルさばきで車を進める。
それを見て私は蔵は本当にこの近くにあるのだろうと安心。

しかしタクシーは町を通り過ぎ山に向かって進むんで行く。やがて家も無くなり本当の峠道に・・

本当にこんな山の中に酒蔵があるの?
と思いきや、山頂付近にそびえる研究所のような建物が出現。
その建物にはあの一ノ蔵のマークが。
そしてタクシーはまるで外資系の企業の研究室おもわせる酒蔵に到着した。

一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|外観
蔵は山の山頂に建てられていて周囲は森。とても環境がよく敷地はとても広大。

一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|外観2
一見、大企業のように見えますが、一度訪問したら必ず一ノ蔵が好きになって帰ってしまうというくらい、とても感じの良い酒蔵です。

株式会社一ノ蔵は昭和48年(1973年)、4社の酒蔵による企業合併によって出来た酒蔵です。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|歴史
日本酒業界の一番のピークは昭和48年。
まさに一ノ蔵が誕生したのと同じ年ですが、丁度この時代は蔵元の企業合同が積極的に行われてきた時代でした。

国の方で「酒造業の近代化を推し進める」という政策があり、国が企業合同を後押ししていました。
その為、全国各地で酒蔵の企業合同が行われていました。

この先、家業としての小さな酒蔵の経営は厳しくなってくるのでは?と危機感を抱いていた宮城県の酒蔵、浅見商店、勝来酒造、桜井酒造店、松本酒造店は、近代化を行い家業ではなく企業として造り酒屋をやって行こうと企業合同を決意。

創業4役員となり新たに「株式会社一ノ蔵」を立ち上げられます。
この4家というのは宮城県の中でそれぞれ営業されていた蔵ですが、エリアが異なり商圏が重ならず逆に合併することで宮城県全域を商圏にする蔵が誕生します。

ただ当時の企業合併で珍しかったのは4家の蔵は全く使わずに、新しくこの地に蔵を建てた事です。
車がないとアクセス出来ない山の中に蔵を建てた理由は「米と水」。

一ノ蔵が建つ山の麓に、創業4家の山本家の蔵がありました。
松本家の酒の良さを鈴木家は知っておられ「どうして松本さんの蔵では良い酒が造れるの?」と質問したところ「ここ松山では良い米が穫れていい水が出るからですよ」という話をききます。

企業合同する以前に鈴木家では松山で穫れた米で酒造りを行われていて、米の良さを実感。
企業合同の話が出てきた時に是非、この辺に蔵を構えたい、という話になったそうです。

周囲の土地を見た中で、ここに良い水が湧きそうだと、現在の場所に蔵を建てらます。

一ノ蔵が使用する地下水「大松沢の水(軟水)」は水量も多く、一切水道を引いていないとの事。
全ての水を地下水でまかなっているそうです。

写真の方は、創業4役員の一人、浅見 周平さん。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|浅見さん
一ノ蔵は企業合同化した酒蔵の中で成功事例として紹介されることが多い蔵です。

今でも創業4役員の後継者が 世代交代し会社を経営されていますが、そういうケースは結構珍しく、世代交代する中で跡継ぎがいなくなったりし4家が3家になったりする事が多いとの事。
一ノ蔵は今もなお創業4家が役員となり経営を続けています。

写真は一ノ蔵の代表商品、無監査。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|無鑑査
一ノ蔵の代表商品、無監査が誕生したのは昭和52年。

当時、日本酒には特急、一級、2級といった級別制度がありました。
ただ級別制度は味わいや品質を正しく表したものではなく、例えば1級の審査に通らなかった酒が、一ヶ月後に改めて審査に出すと通ったりと、鑑定官の舌に依存していてあいまいなものだったそうです。

また1級、2級という級別によって酒税が異なり、1級と2級の間で300円以上酒税に差がありました。
1級の品質の酒を2級のまでで販売したらお客様には300円以上のメリットが生まれます。無監査はそこに目を付いた商品でした。

昭和52年に一ノ蔵 無監査を発売。
それが制度に対してのアンチテーゼとなり節税酒が全国に受け入れられます。
一ノ蔵は創業当時の数年間は会社として厳しかったそうですが無監査のヒットによって救われます。

無監査が世の中に受け入れられた事によって、国税局は級別制度の存続に関わることから「無監査とか無検査という言葉を使うな」という通達を出します。

その通達によって他社は「無監査、無審査」といった表現が使えなくなりました。
しかし一ノ蔵は「無監査」で商標登録が撮れていたので、無監査がという言葉が使えます。

これによって他社による類似商品が市場に現れることがなく無監査のオンリーワン商品が確立します。

無監査の登場によって級別制度に穴がある事が知れ、平成4年に廃止される事になります。

一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|商品
無監査に続き第二のヒット商品となったのが低アルコール酒。
日本酒の裾野を広げるべく昭和60年に、低アルコールの甘口の日本酒「あ、不思議なお酒」を発売。
昭和63年には「ひめぜん」に進化し、発泡清酒のすず音が平成10年誕生。
発売当時は全く受け入れられなかったそうですが、今では低アル発泡酒の代表的な存在です。

写真は麹の枯らし場。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|麹の枯らし場
一ノ蔵では40名の蔵人で年間約2万石(3000キロリッター)の酒を製造されています。

立派な蔵の外観だけ見ると、オートメーション化された大手蔵を思わせますが、一ノ蔵設立の際に「手造りによる酒造りを守っていこう」という考えがあり、手造りによる酒つくりが行われています。

何を基準に「手造り」かというと、
・甑(こしき)を使って米を蒸すこと。(連続蒸米機を用いない)
・蓋麹、箱麹で麹を造ること。(製麹機は用いない)
・酒母を立てること。(すっぽん仕込みはしない)
以上の3つを守り、9月から6月までの3期醸造を行われています。

蔵が広いのもそのためだそうで、機械化すればこの4分の1くらいの広さで同じ製造量の酒がつくれてしまうとの事。

一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|麹室
蔵見学は写真のとおり、通路からガラス越しで蔵の設備を見ることができます。誰でも蔵見学は可能。

写真は洗い場・釜場。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|洗い場・釜場

一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|仕込み部屋
造り手は全て社員杜氏、所属は南部杜氏
以前は季節雇用の南部杜氏が酒造りに来られていたそうですが、年間で雇用した社員を南部杜氏の下で酒造りを学ばせ、今ではその時の社員が杜氏として酒造りをされています。

使用米の97%県産米。
宮城の農業振興も目的のひとつで年間で3万俵の地元米を使用。
3万俵とはどれくらいの量かというと、松山町で1年で獲れる米の量とほぼ同様。
一ノ蔵は地元の農業の支えるくらいの規模の米を使用している事を意味します。

米の種類 酒造好適米では蔵の華が一番多く使用。
その他はトヨニシキ、ササニシキ、県外の3%は山田錦。

あとこの蔵の他に金龍蔵というもうひとつの蔵があり、そちらでは金龍というブランドの酒を造られています。
金龍蔵はふた麹で酒造りをしている昔ながらの蔵。
また宮城県では唯一、杜氏・蔵人全員が南部杜氏が酒造りをする蔵だそうです。

今では杜氏さんだけ南部から来て、蔵人などは地元の人という蔵が大半ですが、金龍酒造では杜氏・蔵人をはじめ、まかないを用意するおばちゃんまで全て1セットで11月に南部からやってこられ4月に帰って行くという昔からのスタイルを継承されています。

このスタイルで続けている蔵は宮城には他には存在しないとの事。
こういう伝統的な姿をもっと外部に発信して行こうという事で金龍ブランドを立ち上げてかれこれ6年続けているそうです。

最後に訪問の証の記念撮影。
一ノ蔵(いちのくら) すず音 株式会社一ノ蔵|記念撮影
一ノ蔵を試飲し、味の素晴らしさに驚く吾郎。

一ノ蔵が造る日本酒も素晴らしいのですが、会社としてもとても素晴らしいビューティフルカンパニーです。
私は様々な酒蔵を回って来ましたが、最も印象に残った素晴らしい蔵を3つ挙げろと言われたら、一ノ蔵の名前を上げたいと思います。

日本酒は財務省の管轄下であるため、食品の法律ではなく酒税法で管理されています。なので食品メーカとは異なる環境状態で酒が仕込まれていますが、一ノ蔵は食品メーカーの方が見学されても勉強になる蔵だと思いました。

また企業としても見習うべき部分が多く、会社経営者の方が訪問されても様々な面で勉強になる蔵だと思いました。

一ノ蔵は第一次日本酒ブームの頃から続く銘柄で、百貨店や量販店で目にする事も多くとても知名度が高い蔵元です。
それ故、日本酒ファンの皆様な様々なイメージを持たれているかと思いますが、ぜひ一度ご訪問される事をおすすめします。
必ず一ノ蔵が好きになって帰られると思います。




商品の購入・質問は一ノ蔵(いちのくら)|株式会社一ノ蔵へお問い合せ下さい。
TEL:0229-55-3322一ノ蔵(いちのくら)、すず音、ひめぜん醸造元株式会社一ノ蔵
ここで書かれているデーターは筆者が訪問した時点の情報となります。

この記事へのトラックバックURL

http://sanoya.jizake.com/t1721

蔵元の熱き思いをお届けします。年間発送1万件以上 地酒のセレクトショップ 佐野屋 地酒.com
◆佐野屋 地酒.com
蔵元の熱き思いをお届けします。年間発送1万件以上 地酒のセレクトショップ。